47の素敵な美術館へ

日本の美術館のおもしろさを見つけるブログ

横浜美術館(2017.2)

早いもので2016年度が終わってしまいました…半年ぶりの更新です;;;美術史の勉強をしてギャラリーでバイトをしていた時はアート界隈の情報しか追っていなかったみたいなところがあったのに、今全然違う仕事をしていると、テレビもないしツイッター見ない限り情報は見事に入ってこないし、生活の外に出てしまうとこんなにも情報が偏って、美術館から脚が遠のいてしまうんだなとしみじみ思います。

最近はもっぱら外出をする時に一緒に最寄りの美術館にいく、というスタイルに替わりつつあります。そんなわけで、2月にAKBの握手会で横浜に行った際に立ち寄った横浜美術館常設展の感想など書きます()

 

横浜美術館 http://yokohama.art.museum/index.html

企画展では「篠山紀信展 写真力」をやっていたのですが、東京オペラシティ宮城県美術館で観たものと表題が同じ巡回展のようなので三度目は入らず*1、常設展のみ観てまいりました。

 

「写真」全館展示 コレクション展2016年度第3期

今期は篠山紀信展に絡めて、写真の大規模なコレクション展。各美術館が所蔵する作品でどのような展覧会ができるかというのも、美術館の1つの楽しみ方です。

横浜美術館の力量ならコレクション展だけでも十分だろうと思って入りましたが、その想像を越えてとても充実した展覧会になっていました。図録の形で残らないのが惜しいくらい。とにかく盛りだくさんでした。出品リスト(以下PDF)がなんと29ページに及ぶという(笑)こりゃ紙面で常備配布できないですねw

横浜美術館コレクション展 2016年度第3期 | 開催中の展覧会・予告 | 展覧会 | 横浜美術館

作品リストPDF→ http://yokohama.art.museum/static/file/exhibition/listofworks2016_3.pdf

第1部は「昭和の肖像 ―写真でたどる「昭和」の人と歴史」と題された近現代日本の写真。紀信展の流れか、著名人を写した写真から始まりました。美空ひばりさん、若かりし日の吉永小百合さん、工藤静香さんなど私でも知ってる芸能人や、川端康成松本清張上村松園横山大観など文学・美術の一線を担った作家。そこから戦中戦後の被害都市、高度経済成長期の東京の風景などなど、まさに日本の写真史を一斉回顧する内容。 

ここで既にひと息つきたいほどの内容なのですが、後半の第2部「"マシン・エイジ"の視覚革命-両大戦間の写真と映像」では、20世紀に戻りカメラオブクスラが誕生した100年前の欧米の貴重なコレクションが続きます。これまでの横浜美の展示でもたびたびお目にかかってきた作品もありましたが、しかしヴォリューム半端ねぇ(笑)

 

《カメラを持った男(Chelovek s kino-apparatom)》

個人的に私は19世紀末から20世紀前半の文化(美術、音楽、映画いずれも)に惹かれるものが多いので、写真やフィルムに写された文化は興味深いものばかりでした。休日に写真の歴史を巡るのには十分すぎる充実さでした。

その中でも特に、第2部の導線の最後にあたる写真展示室の1番奥で上映されていた《カメラを持った男》というフィルムが大変面白かったです。

展示室での上映なのでどうしても途中からの鑑賞になってしまいますが、当日なら1枚のチケットで再入館ができるので二度に分けて全編を観ることができました。60分以上あるサイレントフィルムにこんなに夢中になるなんて思いませんでした。


《カメラを持った男》は ロシアのジガ・ヴェルトフ作、1929年上映(日本では1932年)のサイレントフィルムです。
検索してみるとYoutubeでフル動画がいくつもアップされていてDVD化もされているようです。ただ動画にはどれも音声が付いていますが、展示室では音声は一切ありませんでした。そしてやはりデジタルではなくフィルムで、大きなスクリーンで上映されているものを観ることが非常に意味があるなと感じました。そのフィルムが横浜に大切に保存されているのですから有難いことですね。

www.youtube.com

ジガ・ヴェルトフ 《カメラを持った男 (Chelovek s kino-apparatom)》(1929年)
ビデオ(16mmフィルムより変換、オリジナル:35mmフィル ム)、66分 

"カメラを持った男"が日常の風景を撮影したものがつぎはぎ、合成されている中で繰り広げられるドキュメンタリー的な映画です。「演技や演出の力に頼ることなく物語っぽい映像にする」というのが監督のモットー。物語を意識せずに当時の風景を眺望できるのでぼんやり見ていても面白く、機械などを映している場面でも切り取り方が綺麗で無機質ではないんですね。むしろずっと見ていると生き物や別の何かのように見えてきたり。

当時の大衆や日常風景を撮影した映像を繋ぎ合わせて構成されていますが、複数のフィルムを合成して加工したり、ストップモーションでモノが勝手に動いていたり…。特殊な編集技術と効果の数々が後世の映像制作に大きな影響をもたらしており、映画史に名を残す作品であるとのこと。

展示室の説明書きに書いてあった引用例では、映画「インセプション」が挙げられていました。2010年のアメリカSF映画インセプション」はたまたま観たことがあります。物語も演出もとても面白い作品でした。
「カメラを持った男」からは、例えば"広場が左右に割れるシーン"が引用されているそうです。どこのシーンのことかは、映像を見る前にすぐにピンときました。夢の中ではいろんな次元を自在に操ることができると、ディカプリオが説明しているシーンだったと思います。引用元になっている広場のシーンは、探したら長編の本当にラスト5分のところに数秒でしたw

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インセプション」といえば線路に耳をつけて伏せて列車の通過を待つシーン(夢の中に入った主人公は夢の中で死を迎えることで目が覚めるという設定)がありましたが、あれもトルストイアンナ・カレーニナ』の有名なシーンを想起しますから、「インセプション」自体がロシアの様々な作品の影響を強く受けてるのかもしれません。

あと、少し違うかもしれないけど、ディズニーのアニメ映画でも、キャラクターの頭の脳みその部分が透けて別映像が合成されていたり、混乱した時などにいろんな映像が半透明で重なり合いながら消えてを連発するシーンがあり、印象に残っています。もしかしたら古来のフィルム映画の影響があるのかなーなんて思いました。

これらの作品がコレクションだから、横浜に行った時また観られることがあるかもしれません。その機会を待つのもまた楽しみです^^

*1:2012年から全国各地で巡回してるみたいです。写真だからある程度なら同時多発的に時期かぶっても開催できるんですね。http://www.museum.or.jp/modules/jyunkai/index.php?page=article&storyid=71