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日本の美術館のおもしろさを見つけるブログ

名古屋市美術館(2016.9)

前回の「豊田市美術館」記事の続きです。トリエンナーレ会場にもなっている名古屋市美術館の、ここではコレクション展の感想を書きます。

 

名古屋市美術館 http://www.art-museum.city.nagoya.jp/index.shtml

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市営線の伏見駅から歩いていった白川公園の中にあります。名古屋市科学館のシルバーの球体がとても目をひきますが、その向かいにあるのが美術館です。
建築は黒川紀章。前記事の豊田市美術館設計の谷口吉生同様、日本の美術館建築をいくつも手掛けています。一見すると固さの際立つコンクリートのフレームですが、たとえば半地下になっている吹き抜け(写真左手側のガラス張りのところです)のロビーはガラス張りで曲線を描いていて動きがあります。そのロビーからガラスの先に臨むことができるのは、エントランスの四角形を連ねたカクカクしたフレーム。無機質で素朴な公立施設っぽさがある一方で曲線や円形の特徴があり、その対照的な印象が新鮮です。 

 

名品コレクション展II(前期)

館内は広めの展示室3がトリエンナーレ会場、展示室1・2がコレクションでした。コレクション展示は、トリエンナーレのテーマである「虹のキャラヴァンサライ」から旅が意識された構成でした。

まず、常設展示室2には「エグザイル:自由への旅《琉氓のユダヤ》と《北満のエミグラント》」というタイトルが掲げられています。写真作品です。
仲間でゲームをしていたり立ち話をしていたりする、何げない風景やポートレートですが、どれも移民という性を背負った人々。座っているのは簡易な荷物の上だったり、ゲームをしてるのも室内じゃなかったり。安住でない、「外」にいることを意識せざるを得ない作品ばかりでした。

そして常設展示室1は、コレクションの軸として掲げているエコール・ド・パリ、メキシコ美術、現代美術の作品。

エコール・ド・パリではシャガールの《寓話》が出ており、動物たちのいろんな寓話を楽しめました。メキシコ美術は「メキシコへの旅」、現代美術は「時間の旅」と題されていました。

「時間の旅」でおもしろかったのが、杉本博司さんの《Orpheum,California》(1977年、シルバープリント)。いろいろなシアターで撮影されたシリーズのようです。
横長の画面には客席のある一席からステージのほうを眺めたような、シアターの景色が収められています。スクリーンが降りて光っているから映画館とわかりますが、上映中に露光しっぱなしで撮影されているため、スクリーンは真っ白に飛んでしまっています。映像作品と時間は切っても切れない関係にあります。写真という静止画に、映像の"すべて"を収めようとするとこうなるのか。興味深かったですし、客席や建築構造なども一緒に収められており、シアターの概念が詰まった1枚に思えました。 

今回は常設展示室の導線は、通常のルートと反対に設定されていました。いつも出口になる展示室2から入り、出口は一カ所のため展示室1をまわって観終えると同じところから出ていく。どうしてだろうと思ったら、いつも入口になることが多い展示室1入ってすぐのちょっとした広間に、宮島達男さんの《Opposite Circle》が出ていたからでした。

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レッドとグリーンのデジタルカウンターを用いた、宮島さんの代表的なスタイルの作品です。1桁のカウンター10個でひと塊りにまとまっていたような…それがずらりと一列に並べられて円を描いているのだが、これが結構大きくてスペースをまるまる要していました。タイトル通り、円の向かい側(反対側)にあるカウンターと呼応してカウントが続いている……らしい。スペースの端1カ所からしか作品を眺めることができず、作品の周囲を見てまわることができなかったので、目で観てわかることができなかった。

本作制作のための緻密なドローイングも展示されており、がっつり紹介してるなーと思ったら、「コレクション解析学」と題されたシリーズだったようで、今回の常設展では宮島さんのこの作品が特集されていたというわけ。学芸員が1人1作品をピックアップして解析しているようです。

名古屋市美術館はニュースを「アートペーパー」として発行していて、この「コレクション解析学」は全紙面の1/3ほどを占めて掲載されています。その最新号にこの宮島さんの作品も、時間についてのコラムという形でまとめられています。そのことをウェブサイトを見て知ったのですが、最新号は館で配布中とのこと。紙面でもらえばよかった…→ 最新第102号(PDF)

 

コレクション展第II期は、あいちトリエンナーレと会期末を同じく来週10/23(日)までです。ぜひ!

※次記事は「あいちトリエンナーレ」の感想を予定しています。

*1:キャプチャーは「コレクション解析学2016-2017」ページより http://www.art-museum.city.nagoya.jp/kaiseki2016-2017.html